- ことばの種(STさんのつぶやき)
「沖縄の桜」
昨年11月以来、更新をお休みしていた、「ことばの種」ですが、この4月から、毎月2回の頻度で、再開させていただきます。
以前から読んでくださっていた皆さま、お久しぶりです。
今年度、入園された皆さま、はじめまして。
お子さんの行動・発達に関する「?」を理解したり、子育てに悩む心を、少しだけ軽くしたりできるような情報を、発信していければと考えています。
これから、どうぞよろしくお願いいたしますね。
さて、春です。
日本の春といえば、桜ですね。
でも、私たちそれぞれが「桜」ということばを発する時、思い浮かべる情景は、同じものでしょうか?
例えば、沖縄。
リュウキュウカンヒザクラという品種が主で、花の色が濃いピンクをしています。
枝にぎゅっと鈴生りに花が付き、ヒラヒラと舞い散るのではなく、花ごとポトリと落ちるそうですから、ソメイヨシノとはずいぶん様子が違いますね。
また、これは20年くらい前に沖縄出身の知人に聞いたのですが、沖縄の人は、「本土」の人ほど桜に特別な思いを抱いていないから、お花見で盛り上がる様子を見ても、ピンと来ないのだそうです。(人によると思います。)
沖縄の人が思う、自分たちのアイデンティティになるような、特別な花というと、桜よりも、むしろデイゴの花が、それに近いかもしれない…と。
だから、桜を題材にした歌を聞いたとき、なんとなく共感しづらいとか。
北海道もまた、本州では見られない種類の桜が多くあるそうです。
一方、同じソメイヨシノを思い浮かべても、そのイメージは、やはり地域によって違うように感じます。
私の住む四国地方の土は、関東とは異なり、黄色っぽい土が多いです。
桜の花びらの色と馴染んで、ふんわり柔らかいイメージです。
関東の土はきめ細かく、黒っぽいですね。
桜の花びらとの対比が際立ち、四国で見る桜よりも凛とした印象です。
こう考えていくと、同じことばを用いて、通じているつもりで会話をしていても、それぞれの、これまでの経験によって、本当はみんな、違うものについて語っているという(こんな感じのコントがありましたね)場面が、現実に結構あるのかもしれません。
大人であれば、少しの違和感を飲み込んだり、やりとりの中で、お互いの認識のずれを修正したりしながら、スムーズに会話を続けることができます。
けれども、子どもたちは、ことばや会話の初心者です。
小さなずれが気になって、お話が続けられなかったり、逆にずれに気づかず、わかり合えなかったりすることもあるでしょう。
子どもたちの、ことばの力を伸ばそうと考えるとき、「ことば」にスポットを当てて、集中して関わることも、もちろん大切です。(病院などでのリハビリや、STの個別支援が、この役割を担います。)
でも、その前提として、「そうか、これはこのことなんだ!」
(桜の例で言うなら、「桜って、こんな色で、こんな風に咲いて、散るんだ」)と感動し、実感を伴ってわかる経験をたくさん積むことが、本当に伝わることばの基礎を育てます。
センターで、それぞれの園や学校で、そういった経験を増やしていけたら、すてきですね。
私たち大人も、子どもたちと一緒に、たくさんの感動を経験し、共有できれば、もっともっと、ことばの種を育てることにつながりますよ。