- ことばの種(STさんのつぶやき)
すーぱーかりふらじりすてぃっく…①
ディズニーのお好きな方なら、ご存じ、映画「メリーポピンズ」の劇中で歌われる曲で、困難な状況を切り開くおまじないのことばです。
例えば、こんな困難な状況…。
大人に注意された時。
子ども達はどんな反応をするでしょう?
「はい、ごめんなさい」と、お返事できるお子さんもいれば、「聞きたくないよ!」と言うように、顔をそらすお子さんもいますね。
一般的には、「はい」とか、「ごめんなさい」と言えるお子さんの方が、「素直でいい子」と評価されます。
でも、本当にそうでしょうか?
私は子ども、特に、ことばや発達にゆっくりさのあるお子さんの場合には、本当に「ごめんなさい」という意味で言っているのかな?という点に注意してかかわった方がいいのではないかと思っています。
…と言うのも、注意された内容や、「ごめんなさい」ということばの意味を、よく理解しないまま、言っている場合があるからです。
例えば、食事の前に「いただきます」を言うように、大人が怒っているという状況では「ごめんなさい」と言うんだよね…というように、場面として理解していることもあります。
または、「ごめんなさい」と言ったら、嫌なこと(注意されている、叱られている状況)を終わらせることができる、大人が「いいよ」と許してくれる、いわば魔法の呪文のような感覚で使っていることもあります。
これはこれで賢いな…と思いますし、「ごめんなさい」が言えるのは、周りの人に可愛がってもらいやすい行動ですから、ことば・やりとりの覚え初めであれば、決してダメなわけではありません。
ですが、ずっとこのままというわけにもいきません。
何を注意されたのか、どうしていけなかったのか、どうすればよかったのか…、わからないまま、場面が切り替わってしまうので、その(望ましくない)行動は、おそらく同じ状況になれば、また繰り返されてしまいます。
これでは、周りの人も困ってしまいますね。
(なぜだかわからないことで大人が怒るという状況は、子どもとの信頼関係にもかかわってきます。)
更に、そういったことが続けば、周りの大人やお友だちから、「ごめんなさい」って言ったのに、またやってる、反省してない(わかって言ってないので、反省なんてできません!)、あの子はうそつきだ!と思われてしまうかもしれません。
これは、子ども自身にとって、とても悲しいことです。
それから、私が1番しんどいな…と思うのは、その子にとって「わからない」ことを、「わからない」方法で、(大抵、怒ったり、呆れたりした態度で)延々と注意され続けるという状況そのものです。
想像してみてください。
例えば、ドイツでは手を挙げてタクシーを呼び止めるジェスチャーは、よくないのだそうです。
ナチス時代の敬礼を連想させるからだそうで、これはなかなかに重大で、センシティブな問題です。
日本人にとっては普通の行動ですから、予備知識がなければ、何がいけないのか、ピンときにくいのではないでしょうか?
更に、それをドイツ語(ドイツ語が堪能な方は、他の言語でご想像ください)で注意されたら…
しかも、相手はとても怒っている…
すごく、困りませんか?
つらくないですか?
私は、とてもしんどいです…
この状況を、とりあえず終わらせることができるなら、呪文の1つでも唱えたくなってしまいます。
「すーぱーかりふらじりすてぃっくえくすぴありどーしゃす(涙)」
本当に、注意されたことがわかっているのかな?
本当に「ごめんなさい」と、思っているのかな?
どうしたらよかったのか、わかったのかな?
素直ないい子に見える、子ども達の反応も、「本当に?」という視点をもって観察することが大切です。
そして、お返事はいいんだけど、同じことをくりかえしてしまう…という時には、大人の方が、注意のしかたを工夫する必要があるかもしれませんね。
ことばではわかりにくいなら、絵や文字で見せたり、望ましい行動のお手本を示したり。
してほしかった行動(お友だちを叩くのではなく、なでなでするとか、おもちゃは投げないで、そっと箱に入れるとか)を、子どもの手をとって、大人が一緒にするのも有効です。
子ども達の(大人が思う)困った行動が続く時、子ども達自身も困っていることが、多いです。
どうして、その行動をするのか、本当はどうしたいのか?
何に困っているのか?
何が(どうして)わからないのか、どうすればわかるのか?
ただ「だめでしょ!」と注意するのではなく、その背景や子ども達なりの言い分を探ってあげると、子どもたちの行動は変わってきますよ。
(文中での「ことばではわかりにくい」について。ことばをたくさん知っていて、上手にお話できるお子さんでも、口頭でのことばだけでは、その語の意味はわかるけれど、実感としてはわかりにくい、腑に落ちない…ということが、実はしばしばあります。)
*今回は、「ごめんなさい」が言えるけれど、同じ行動を繰り返してしまうお子さんにスポットを当てました。次回は、「ごめんなさい」が言えなくて困っているお子さんのケースをお話しします。