- ことばの種(STさんのつぶやき)
お行儀よく食べる
「ことばの種」というタイトルなので、コミュニケーションの話題が多いのですが、久しぶりに「食べる」ことについてお話ししたいと思います。
お子さんのお食事のしつけに苦慮されている保護者の皆さんも多いのではないでしょうか?
どこまで、厳しくするべきなのでしょうか?
もう、食べられれば、別にいい?
迷いますね…
ところで、そもそもお行儀よく食べなくてはいけないのは、どうしてでしょう?
「そういうものだから…」とか、一緒にお食事をする相手への配慮とか、理由は様々です。
STの立場から言わせていただくなら、突き詰めていけば、「安全に、おいしいものを、楽しく、食べ続けるため」ではないかと思います。
健康な子どもや若者の場合、あまり意識しないのですが、高齢になってくると「お行儀のよくない食べ方」は、誤嚥のリスクに繋がります。
例えば、姿勢が悪いと、飲み込むための力が入りづらく、食べ物の欠片が咽頭に残る要因になります。
1口の量が多すぎたり、十分に噛まずに、食べ物を次々と口に運んだりすると、1回の嚥下で処理しきれなかった食べ物が気管に入ってしまうかもしれません。
おしゃべりしながら食べることは楽しいですが、お蒸に食べ物が入っている状態でお話ししてしまうと、予期せぬタイミングで食べ物が喉頭に落ちてきて、噎せたり誤嚥したりすることがあります。
高齢になると、誰でも、嚥下の能力は低下します。
誤嚥性肺炎とは、誰もが無縁ではいられません。
けれども、嚥下の機能低下が軽度であれば、食べ方に気を付けることで、ある程度はそのリスクを軽減することはできます。
ただ、年齢を重ねてから、食べ方を変えることは、とても難しいことです。
急いで食べる癖のある方に「ゆっくり、よく噛んで」というのは、簡単なようで、なかなか…
そうしたら、どうなるか、と言うと…
お食事の形態を、細かく刻んだり、ミキサーにかけたりしたものかえさせていただくことで、誤嚥のリスクを軽減します。
(どんなに注意深く召し上がっても、嚥下機能の状態によっては、形態の変更を避けられない場合はあります。)
1口の量や、口に運ぶペースの調節が難しければ、ご自身で食べる手の力が保たれていても、介助者がお口に運ぶお手伝いをすることで、安全な量やペースを調節することもあります。
どうしても、おしゃべりしてしまって、そのことが誤嚥リスクに繋がるようであれば、話し相手がいない環境でのお食事をおすすめする場合もあります。
これらのことは、安全にお食事を続けるために、私たちSTが講じる対策の1例です。
必要だから、お願いするお食事の方法ではありますが、想像してみてください。
みじん切りにして、とろみをつけたサラダや焼き魚…
近頃は、少しでもおいしさを保たれるよう工夫された市販品もありますが、やっぱり、あまりおいしくないですよ。
自分で食べられるのに、お箸やスプーンを取り上げられて、他人のペースで食べさせられるのだって、どんなに気を使って、やさしく対応してもらえても、あまり愉快なものではないでしょう。
他の人は、楽しくお話ししながら食べている中、自分は1人きり。
寂しい気持ちになります。
もしかしたら、どんなに気を付けていても、いつかは経験することなのかもしれません。
それでも、幼少期に身に付けた生活習慣で、好きなものを、自分のペースで、楽しく食べられる期間を、少しでも長くすることができるのなら。
子ども達に「お行儀よく食べる」ことを、習慣付けるのに、十分な理由になるのではないでしょうか?
もちろん、厳しく注意しすぎて、お食事が進まなくなってしまうのでは、本末転倒です。
私個人としては、
「子どもだから」
「あらあら、かわいらしい」
と、容認してもらえるうちに…くらいの、ゆったりした目標で、身に付けていけばいいのではないかと思っています。